杉並区立荻窪小学校長 川崎 知已

                                                  
<平成24年度・学校便り 巻頭言 より  
4月号 力を貸してください
5月号 となりのせきのますだくん
6月号
7月号
9月号
10月号
11月号
12月号
1月号
2月号
3月号

<4月号>

力を貸してください

―児童の安全・安心な学校生活、

教育内容の一層の充実のために―

    校 長  川 崎 知

今年は冬が冷たく長く、関東地方では12年ぶりに「春一番」が観測されなかったようです。

これは、人間が決めた「春一番」の定義に当てはまらなかっただけのことであり、自然は、例年より遅れてでも、桜の開花をはじめ、さまざまな「春」を私たちに届けてくれています。

今年度も桜の花が咲く中、新しい年度が始まりました。1年間、宜しくお願いいたします。

 

昨年度で創立60周年を迎えた荻窪小学校は、今年度は荻窪小学校の第2世代、セカンドステージにたち、児童はもとより、保護者や地域の方々に信頼され、愛され、魅力ある学校となるよう「共に学ぶ、共に創る荻窪小学校」を合言葉に努めて参ります。

そのため、平成24年度は、主に次のことを重点目標に力を入れていきます。

1 教師力の一層の向上

教職員は、教育公務員、教育の専門家としての自覚と誇りをもって、自己の学習指導、生活指導、特別支援教育の力量を向上するよう努めます。特別支援教育については、東京学芸大学とプロジェクトを組んで、児童の的確な把握と適切な指導を目指します。

2 習得、活用、探求、問題解決力の向上

各学年で身に付けるべき学習内容を確実に習得させること、学んだ学習内容を活用して新たな問題解決する力を育成することが、児童の自信や自己肯定感を高めることにつながるよう、一人一人の児童の教育的ニーズに応じた教育を行っていきます。

3 小・中一貫教育の充実

小学校における教育を、児童が将来において自己実現を図っていける力の素地を培う期間ととらえ、宮前中学校と義務教育9年間の視野にたって各教科等の指導、生活指導、特別支援教育等を系統的に行っていきます。また、宮前中学校との小中一貫教育の様々な取り組みを通して、円滑な接続のための課題を明確にし、小学校としての解決策や対応策を検討していきます。

4 環境学習の充実

「まるごとエコスクール」である本校は、施設・設備、自然環境を生かした環境学習の推進・充実を図り、児童の「思考力・判断力・表現力」「実践力・行動力」を育成していきます。また、各学年、専科で実施する環境学習の実践を、保護者、地域の住民の方々に公開していきます。

5 組織的・計画的な体力向上

荻窪小学校は、児童数に比較して校庭の面積が狭いなど、施設上の課題があります。それゆえに、その施設上の課題を踏まえて児童の体力向上に向けて、全校体制で、組織的、計画的に取り組んでいきます。

6 あいさつの励行

荻窪小学校の児童が、快活に校門や校内・外で、顔見知りの方、お世話になっている方、来校者に快活な、あるいは時と状況を踏まえた挨拶をしていくよう、学校と家庭と、地域とが連携・協力による、あいさつ励行等に向けた新たな取り組みを検討し、実施していきます。

 

そして、保護者、地域の皆様にお願いがあります。次のことに力を貸してください。

7 保護者等による学習等サポーターの導入

 教職員は、100%の力で児童の教育に努めます。それに保護者等の方が力をお貸しくださると、プラス20%、30%の教育内容が充実させていくことができます。

児童の安全・安心な学校生活や学習活動を確保できるよう、また、より効果のあがる教育活動にしていくため、児童の見守り、実験や実技体験等を伴う学習活動、教育活動のサポートにご協力いただきたく思います。

これまでも、担任の教員等が個々にお願いして、快くご支援やご協力をいただいてきましたが、今年度からは、学校支援本部を連絡・調整の窓口として、組織的に、保護者等の学習等サポートを制度として開始します。詳細な内容については、改めてご説明しますが、是非とも力を貸しください。宜しくお願いいたします。

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<5月号>

となりのせきのますだくん

     校 長  川 崎 知 己

子供たちが駆け出すと、その背中で、色とりどりのランドセルが楽しげに弾んでいるように見えます。大人の目には、心弾んで学校に通っている子供の心の象徴のようにも映ります。

私も、その昔、ランドセルを背負って小学校に通っているときに、道ですれ違う大人にしばしば声をかけられたものでした。

「まぁ、いいわね。小学生は、かわいくて、無邪気で、楽しそうで・・」

そのたびに、大人が思うほど子供は無邪気でも、気楽な毎日を過ごしているのでもないのだと子供心に思ったものでした。

「先生」がとにかく怖くて、叱られないように、失敗しないようびくびくしていたし、授業中は、丁寧に上手に仕上げなければならないという気持ちと、時間内に作業を終わらせなければならないという焦りの気持ちで、年中ドキドキしていたようにも思います。

学級にいる乱暴な男の子やわがままな女の子は、平穏を願う私の心をかき乱すことがしばしばあったし、日々、心配や不安の種は尽きず、小さな胸(?)を痛めつつ学校に通ったと記憶しています。

そんな私が好きな絵本に「となりのせきのますだくん」(武田美穂 著)があります。

小学生である美穂ちゃんは学校に行くのが憂鬱でしかたがありません。病気にならないか、さぼってしまおうかと画策します。その原因は隣の席の「ますだくん」にあります。絵本に登場する「ますだくん」はなぜか緑色の怪獣です。ちょっとしたことでもすぐに意地悪する怪獣です。怪獣「ますだくん」は、体育が得意で、なわとびもかけっこも苦手の美穂ちゃんに「へたくそへたくそ」と意地悪を言います。ある日、帰りの時間に誕生日にもらったピンクの鉛筆を「ますだくん」に折られてしまった美穂ちゃんは消しゴムを「ますだくん」に投げて抵抗します。びっくりした「ますだくん」は美穂ちゃんをにらんでいました。ですから、翌日、学校に行く美穂ちゃんは「ますだくん」に何をされるか分からないと怖くて仕方がないのです。美穂ちゃんは、校門のわきに立っている「ますだくん」の前をどきどきしながら通り過ぎます。「ほっ」としたのもつかの間、怪獣「ますだくん」が突然美穂ちゃんの手をつかんで、恐怖の真っ只中にいる美穂ちゃんに「ごめんよ」と言うのです。最後のページは、2人の可愛い小学生が校舎に入っていく後ろ姿が描かれています。そこにいる「ますだくん」はあくまであどけない小学生です。しかし、これまでの「ますだくん」は、美穂ちゃんには恐ろしい怪獣以外の何者にも見えなかったようでした。

 

 子供は、子供でいろいろな感情体験をしながら生活をしています。恐ろしい怪獣にしか見えない「ますだくん」であることは「心理的事実」です。客観的な事実とは異なるものです。子供の「心理的事実」をしっかり受け止めて、しかし、それに揺るがない大人の存在があって、子供は、やがて「客観的な事実」を見ていこうという成長段階を踏んでいくのだと思います。

 

「泣いている子がある。涙は拭いてやる。泣いてはいけないという。なぜ泣くのと尋ねる。弱虫ねえという。……随分いろいろのことはいいもし、してやりもするが、ただ一つしてやらないことがある。泣かずにいられない心もちへの共感である。

  お世話になる先生、お手数をかける先生。それは有り難い先生である。しかし有り難い先生よりも、もっとほしいのはうれしい先生である。そのうれしい先生はその時々の心もちに共感してくれる先生である。

  泣いている子を取り囲んで、子たちが立っている。(なん)にもしない。(なん)にもいわない。たださもさも悲しそうな顔をして、友だちの泣いている顔を見ている。なかには何だかわけも分からず、自分も泣きそうになっている子さえいる。」   (倉橋惣三『育ての心(上)』より)

 子供の心もちに共感してくれる教員や保護者の存在はなくてはならないものです。そして、その時に子供の
話す「心理的な事実」を「客観的な事実」と混同して、動揺したり、感情的になったりしない、どっしりと構えた大人が共感してくれてこそ、子供は自分の内にエネルギーを貯め、勇気を出して自分で解決に向けて動き出すと思います。

 子供にとって、そんな大人でありたいと、いつも思っています。


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