中学部卒業式

3月20日土曜日、中学部の第6回卒業式が挙行され、72名の卒業生が学園を巣立ちました。前日は、中止になった京都奈良修学旅行の代替措置として、八景島シーパラダイスへの日帰り修学旅行を実施したので、体調を崩す生徒がいないかと心配しましたが、全員が卒業証書を持ち、元気に大人への階段を登り始める事ができました。新型コロナウイルス感染防止対策の為、卒業生に式歌を歌わせてあげる事ができませんでしたが、生徒代表の別れの言葉が様々な想いを綴ったものであることなどから、とても感動的な卒業式になりました。解散後も小学部時代から6年間慣れ親しんだ、芝生校庭から離れ難いのか、しばらく皆で過ごしていました。卒業生全員の大きな夢が実現される事を心から祈っています。

式で読ませていただいた学園長式辞の原稿を掲載させていただきます。

令和2年度 中学部 卒業式 式辞

神田川沿いの桜も開花の時を迎え、和泉の町全体から春の息吹を感じるこの良き日に、たくさんの保護者の皆様においでいただきましたこと、また、 学校運営協議会、学校支援本部の皆様にご臨席いただきましたことに、学園を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。

さて、卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただいま、皆さんに、中学部の全課程を修了したことを認めた「卒業証書」をお渡しいたしました。皆さんは、国が定める九年間の義務教育を立派に終えることができたのです。

私と皆さんの出会いは、皆さんが小学部の六年生に進級した時になります。本学園を旅立つ今、中学部で皆さんが活躍する姿だけではなく、小学部六年生の時に一緒に行った、弓ヶ浜移動教室で見せた楽しそうな笑顔や学芸会で発表した「夢からさめた夢」という演劇で、一生懸命に演じる姿がとても懐かしく思い出されます。私から卒業証書をお渡しするのも、ほとんどの生徒が二度目となります。あの幼さが残る姿から、ここまで凛々しく、立派に成長した事をとても誇らしく、また嬉しく思います。その小学部卒業式の式辞の中で、皆さんに、二〇一五年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智(おおむら さとし)教授の「行動を起こすことにより、何かが生まれる。行動を起こさなければ何も生まれない。」という言葉を引用し、中学部では、大変だと思えることや実現が難しいと思えることに果敢にチャレンジしてもらいたいことをお伝えしました。

あれから三年、皆さんは、その言葉の通り、仲間たちと豊かにかかわりながら、様々なことにひたむきに挑戦し、心身を大きく成長させるとともに、五周年を迎えた学園の新たな歴史・文化を創造してくれました。ここに集う皆さんは、正に学園の目指す「コミュニケイト」「チャレンジ」「クリエイト」の精神を身に付けた、将来どんな困難なことに遭遇しても、しなやかさをもって闘い、打ち勝つことのできる自慢の生徒たちです。そのような皆さんに本学園卒業にあたり、私から最後のメッセージをお伝えしたいと思います。

それは、ジャーナリスト、池上彰(いけがみ あきら)さんの「なぜ 僕らは働くのか」という本の中で、未来を生きる人に必要な力として紹介されている「レジリエンス」という力をこれからの人生において、高めていっていただきたいということです。この「レジリエンス」とは、逆境にあっても前向きに行動できる力、挫折を経験しても再起できる心の回復力のことを表したもので、人の心理を健康に保ち、勉強・運動や仕事などで成果を出すために重要な能力と言われています。言うまでもなく、人は生きていると新型コロナウイルス感染症の予期せぬ流行や災害、今回の修学旅行の中止など、自分の力では、どうすることもできないこと、一生懸命に努力してもよい結果が出せないことに何度も遭遇します。中学部での生活においても、「部活動でレギュラーになれなかった。」「一生懸命、準備したはずの定期考査で失敗してしまった。」など、その時に精一杯頑張った事、大切にしていた事に挫折することを何度も経験することがあったと思います。そして、その時は、泣きたくなるほどの大きな消失感や挫折感を味わったことでしょう。これからの人生においても、様々な事に果敢に挑戦すれば、願いがかなわなかったり、失敗したりすることもあるでしょう。また、これからの時代は変化が激しく、この先、何が起こるか分からないストレスフルな社会となることも予想されます。そのような辛い時にこそ、それを乗り越えるため、心が折れずに再起を図ろうとする力である「レジリエンス」が高まっているか、否かがとても大切になります。また、池上氏は、先ほどの著書の中で、この力が、つらい経験から教訓を得て、自分を少しでも成長させようと努力する中で強化されるとも述べています。皆さんには、経験したくはないかもしれませんが、若い時の失敗・ピンチは、この「レジリエンス」を高める絶好の機会・チャンスであると前向きにとらえ、逞しく乗り越えていっていただきたいと思います。そして、数々の試練を乗り越えたことによって高められた「レジリエンス」を底力として、皆さん一人一人の夢がみごと実現される事を心から願っています。そして、誰にも相談できず苦しくなってしまった時には、これまでかかわってきた本学園の教員にいつでも相談にいらしてください。これからも皆さんのもう一つの「心のふるさと」として、温かく迎えたいと思っています。

結びになりますが、本日、ご参列いただきました保護者の皆様、小学部から数えて六年間にわたり、皆様のかけがえのないお子様をお預かりして、我々教職員一同、精一杯、愛情を注ぎ、教育に当たってまいりました。中には至らぬ点あったかとも存じますが本学園の教育に対して温かいご理解とお力添えをいただきましたことに、心より感謝申し上げます。合わせて、今回、新型コロナウイルスの感染防止のため、このような形で卒業式をしなければならなかったことをお詫び申し上げます。

それでは、いよいよ、大好きな皆さんとのお別れの時となりました。卒業生の限りない前途を祝して本日の式辞といたします。

令和三年三月二十日

杉並区立杉並和泉学園 和泉中学校長

田 中  稔

 

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