令和5年度 園便り

9月 子供園の教育・保育を守るために  園長 川嶋 佳恵

 楽しいことがたくさんの2学期が始まりました。私たち職員一同、様々な場面で、子どもたち一人ひとりが力を発揮して、輝く笑顔が見られるよう尽力してまいります。2学期もよろしくお願いいたします。

 さて、6月にPTA役員会で、「今後の子供園に望むこと」というテーマで、PTA役員、委員の皆さんが、それぞれに思うことを出し合う機会がありました。そこでは、「園への入園を決定付けたのは、年長の子どもたちが主体的に動いて運動会を進める姿だった。主体性は、子どもたちが普段から日常の園生活の中でやりたいことをやらせてもらえているから育まれているのだと思う。運動会のような行事でも自分の力を発揮して生き生きと動いている、決してやらされている感じのない様子を見て、絶対にこの園に入園したいと思った。」「子供園は、地域の中で、多様な子どもたちを受け入れて多様な子どもたちが幸せに過ごし、成長していくための最後の砦だと思っている。個性を受け入れてもらえ、どのような子どもたちにとっても適切で丁寧な援助のもと質の高い教育・保育が受けられ、確実に成長することができる貴重な存在。」「子供園は、枠にとらわれず、それぞれの個性に向き合い、決して否定せず受け入れてくれる存在であり、それは、子どもの成長にとても大切なことだと実感している。」「大人になり、社会に出たら、色々な人と関わっていかないといけない。今、この幼児期に様々な個性を持っている友達と遊びや生活の中で関わり、楽しいことばかりでなく、ぶつかってけんかをすることもあるし、自分に合う友達ばかりではない、うまく解決できることばかりではない多様な感情体験ができる子供園の教育・保育が大人になった時に必ず生きる力になると思う。」等子供園の教育や教育によりもたらされる効果を熱く語り、この教育・保育を大事にしてほしいと切望する様子がありました。私は、園長として、高井戸西子供園の教育のよさや教育の質を保護者の方が実感し、今後の園に望むことについて、サービス的なことではなく教育の質について多く語られたことをうれしく思うと同時に保護者の皆様の質にこだわる幼児教育への強い意識と子供園の教育・保育を語るスキルの高さに感心し、この場だけでなく、もっと公の場や地域のコミュニティーでも発信できたら素晴らしいと感じました。

 実は、今、全国の公立幼稚園・こども園の存続が危ぶまれています。特に、東京都は顕著です。その要因は、少子化や、令和元年10月に施行された幼児教育・保育の無償化、共働き世帯の増加、様々な大人目線のサービスが受けられる保育施設の増加などによるニーズの減少が考えられますが、公立幼稚園・子ども園(杉並区立子供園)が取り組んでいる幼児が主体的に取り組む遊びの中で学ぶという枠組みのない教育・保育が分かりにくい、また、その教育・保育で育つこと、例えば、社会的情動スキル(非認知能力)や、自己肯定感等大人になった時に社会的にもたくましく生きるためにも絶対に必要である力が、すぐに目に見えない、見えにくいということによる公立幼稚園・子ども園の存在価値、教育の価値の軽視が大きな要因だと考えます。それに加え、社会的に幼児教育の質の高さについては、いわゆる早期教育や小学校教育の前倒しと誤解されることがまだまだ多いことも事実です。
 令和5年4月より『子ども基本法』が施行されました。子どもの最善の利益を第一として「こどもまんなか社会」の実現をコンセプトに掲げ、子どもの権利が守られ、子どもが健やかに成長し、幸せな生活を送ることができる社会を目指すものです。「こどもまんなか」は高井戸西子供園の「すべては子どもたちのために」のモットーと同じですね。
 「大人が子どもを自分の思い通りに動かそうとしていないか」「自分の都合で子どもを理解していないか」「こどもを低く見るような高慢さはないか」。これは、日本の幼児教育の父と呼ばれ、大正時代から昭和初期に活躍した教育家倉橋惣三の言葉です。この言葉の考え方を基盤として、子ども一人ひとりの心情に寄り添い、幼児期にふさわしい教育の推進に努めているのが、国公立幼稚園・子ども園の教育つまり杉並区の子供園の教育です。幼児が地域社会に温かく見守られ、主体性を発揮しながら生き生きと遊びに取り組み、発達に必要な体験を積み重ねていくことができるようにする、この教育こそが「こどもまんなか」につながる取り組みであると考えます。また、2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿として、「個別最適な学び」と「共同的な学び」を一体的に充実することが示されています。これは、幼稚園・子ども園だけでなくすべての小学校以降の教育においても重視されるようになった学び方です。そして、この学び方は、公立幼稚園・子ども園(杉並区立子供園)がずっと行ってきた教育の形です。このように時代は変わっても公立幼稚園・子供園で行われている幼児教育の理念は不変であり、高井戸西子供園が、杉並区立子供園が、そして、国公立幼稚園・子ども園が行っている「こどもまんなか」で、「個別最適な学び」を保障する教育は、不易なもの、欠くことのできないものだと国レベルで示しているのです。だから、公立幼稚園・子ども園が取り組んできた教育は、絶対になくなってはいけないと強く思います。

 私も担任の先生たちも、常に高井戸西子供園の教育や学級の取り組みについてまた、質の高い教育についてできる限り言語化、可視化し、私たちが取り組んでいる教育・保育について、またその重要性について理解と共感を得る努力をしています。しかし、園側の発信だけでは、伝わり切らない部分があります。実際に教育・保育を受けてみてどうだったか、教育の質の高さや良さを実感した保護者の皆様が具体的な声を上げることで、子供園の教育・保育について別の角度から言語化・可視化でき、その教育の重要性が伝わっていくのではないかと考えます。そして、このように保護者の方が子供園の教育の質や良さを社会に発信していくことは、高井戸西子供園の教育、杉並区立子供園の教育、ゆくゆくは、東京都の国公立幼稚園・子ども園の教育の存続に大きく影響すると思います。
 すべての子どものウェルビーイングのために、見えにくいと言われている幼児教育における質の高い教育をそれぞれの立場に応じて言語化、可視化し、子供園が行っている幼児教育の社会的な評価を高め、杉並区立子供園の、そしてすべての公立幼稚園・子ども園の存続に寄与できるよう尽力していきたいと考えます。

9月 年少ことり組

 2学期が始まりました。☆ほしチームと☀おひさまチームの全員が久しぶりに揃って、子どもたちはとても嬉しそうです。
 9月は、保育者や他の幼児と一緒に、園生活のリズムを思い出し、安心して過ごせるようにしていきます。1学期に楽しんだ遊びを楽しみながら、新しいことにも関心をもてるようにしていきます。また、曲に合わせて踊ったり園庭で走ったりして、みんなと一緒に体を動かして遊ぶ楽しさを感じられるようにします。

9月 年中うさぎ組

 久しぶりにうさぎ組みんなで集まって遊べることを楽しみながら、少しずつ園生活のリズムを取り戻していきます。保育者や友達と関わる中で、1学期に楽しかったことや夏の経験を思い出したり、再現したりしながら楽しく遊べるようにします。
 運動会に向けては、走る・投げるなどいろいろな動きを経験し、体を動かす心地よさを味わえるようにしていきます。また、曲に合わせて踊ったり、イメージしたことを動きで表現したりする楽しさも感じられるようにします。学級のみんなで取り組む楽しさを感じながら、一人ひとりがのびのびと自分の力を出していけるようにします。

9月 年長ぞう組

 2学期は始まりました。久しぶりに会った友達や先生との再会に嬉しさいっぱいの子どもたちでした。「みんなひとまわり大きくなって、たくましくなったなあ。」と感じます。9月は、1学期に楽しかった遊びやみんなで一緒にする活動を再現して遊んでいきます。
 また、運動会に向けての取り組みが始まります。学級やグループの仲間と一緒に活動する中で、自分の考えを出したり、相談したりして仲間と力を合わせる経験ができるようにします。
 その取り組みの中で、一人ひとりが自分の役割が分かり、自信をもって自分の力を発揮することができるように支えていきます。

8月 子どもたち一人ひとりが笑顔で過ごすため  教諭 伊藤 優香

 1学期もあっという間に終わり、明日から夏休みです。4月当初には登園時に泣いていたことり組の子どもたちも、今では子供園で遊ぶことを楽しみに笑顔で登園するようになりました。うさぎ組の子どもたちは、自分の好きな遊びをすることや気の合う友達と一緒にいることがとても楽しそうです。ぞう組はみんなで力を合わせてぞう組ランドやカレーパーティーをしました。友達と協力して準備を何日も頑張り、ことり組やうさぎ組が楽しんでくれたことに達成感を感じていました。学年を超えた活動ができるようになり、より充実した1学期を過ごすことができました。

 今月は特別支援教育について書きたいと思います。私は今年度特別支援教育コーディネーターを務めています。保護者の皆さんは『特別支援教育』を知っていますか?国連総会は2006年12月に、「障害者の権利に関する条約」を採択しました。日本はそれに伴って2007年に同条約に署名、文部科学省は2012年に障害者権利条約の理念を踏まえ、障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に教育を行うこととしました。また「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた取り組みを支援するという視点に立ち(以下抜粋)適切な指導及び必要な支援を行うものとするということです。
 高井戸西子供園では、それぞれの幼児のニーズに応じて必要な支援が届くことを目指しています。具体的には、各学級の担任は学級の幼児について、それぞれの個性や特性を踏まえてどのような援助を行っていくか計画を立てています。それを基に、特別教育支援コーディネーターが中心となり、毎月1回園内委員会を開き、支援が必要な子どもについて実態把握や目標の設定、実践、評価をして、次の目標に向けての支援を考えています。
 さて、ここまでの文章からは、特別支援教育は支援の必要な幼児のためだけにあると感じられたかもしれません。しかし、特別支援教育は、支援を受けるお子さんだけに向けたものではありません。それは、支援を必要とするお子さんと一緒に生活する学級の子どもたちの心や様々な人に関わりながらちがいを認め合い、共に生きる力を育てることも特別支援教育の重要な内容であると考えているからです。また、誰しも得意なこと、苦手なことがあります。幼児一人ひとりの苦手なことや個性、特性に応じて必要な援助を行うことは、特別支援教育と同じです。そのように考えると、特別支援教育は、特別なものではないのです。
 特別支援教育の基本はユニバーサルデザイン化ともいわれます。日々の生活や遊びの中で、誰か一人でも分かりづらいものは、他にも分からないと思っている子がいるかもしれません。全員が分かりやすく環境や取り組み方を整えることで、日々の遊びや活動で一人ひとりが自信をもって取り組んだり、できた嬉しさを感じたりできることにつながっていきます。そのように考えると、特別支援教育は支援を必要としている幼児だけのものではなく、全ての子どもたちのためにあるのです。
 子供園が目指している特別支援教育は、支援を必要とする幼児自身が自分の特性を知り、できることは自分で頑張り、できないことは、助けを求めながら社会の中で生きていく力を身に付けられるようにすることと同時に、学級の一人ひとりが周りにいる友達の特性や個性を理解し、受け入れ自然に見守ったり、助けたりしながら、様々な人と共に生きていく力を育てる教育です。支援を必要とする子どもたちも、共に生活する子どもたちも、それぞれに必要な力を身に付け、大人になって社会の中でもみんなが自然に相手の個性やちがいを受け入れ、互いに尊重した関わりができるようになればいいなと思います。