令和6年度 園だより

『遊び込む大切さ』 副園長 大塚玲華

入園、進級から3週間ほどが経とうとしています。朝お家の人と離れがたくて泣きそうになったり、保育室、担任の先生という新しい環境の中で少しドキドキしたりしている子どもたちも、しばらくすると、自分がしたい遊びを見つけて真剣な表情や、笑顔を見せながら遊ぶようになってきました。
先日、らっこ組のA君が砂場の近くで真剣な表情で遊んでいました。A君は、タライに汲んである水をカップですくい、やかんに入れています。しばらくすると、タライの水が少なくなり、すくいにくくなってきたので、カップを素早く動かしたり、水をかき集めたりしてどうにか水をすくおうとし始めました。それでも十分にすくえなかったため、今度はタライを斜めに傾けて、水が一箇所に集まるようにしてすくっていました。満足できる量の水がやかんに集まると、今度はお椀に水を注ぎ始めました。水がお椀に溜まると、やかんに水を戻して、またお椀に注いで…と、繰り返し水の移し替えを楽しんでいました。しばらく移し替えを楽しむと、今度はお椀に入る量ギリギリに水を入れました。溢れると思ったのか、はたまた表面張力で膨れ上がっている水面に何か乗せたくなったのかはわかりませんが、キョロキョロと何かを探した後、近くにあるやかんの蓋をお椀にポン!と乗せました。なんとなく、やかんの蓋を持ち上げてみると、なんと下のお椀も一緒に持ち上がってしまいました。A君は驚いた表情を見せた後、不思議に、そして面白いと思ったのか、再びお椀ギリギリに水を注ぎ、やかんの蓋を乗せ、お椀も一緒に持ち上げてみるということを何度も試していました。何度も試している途中で、偶然やかんの中に水を含んだ砂が溜まっている様子に気付きました。どうやら、やかんに砂が入っているのに、注ぎ口からちゃんと水が出てくるのが不思議だと思ったようです。今度はやかんに溜まった砂を内側の注ぎ口の接続部分にギュッと集めて塞ぎ、それでも水がやかんから出てくるか、どうやって出てくるか、真剣な表情で、水の流れを見ながら何度も水を注いでみて試す姿がありました。
A君の遊びの中には、水をやかんに入れたい、と自分から環境に関わり、そして偶然に起きる様々な出来事(水が少なくなって掬いづらくなった、お椀いっぱいに注いだ水に蓋を乗せたら、お椀も持ち上がった、たまたまやかんに入っている砂を目にした等)に対して、解決したいと思ったり、面白さや不思議さを感じたりして、繰り返し考え、試したり、水をギリギリに入れると、くっつくものがある、砂が入っていても、水が流れる、ということを感覚的に知る経験がありました。
大人からすれば、ただ「遊んでいる」行為の中には、このように様々な学びがあります。子どもの遊びは、一人でじっくりとすることもあるし、友達と関わりながらすることもあります。どのような形でも、遊ぶことを通して、自分から「やってみよう」と遊びの環境に関わり、環境との関わり方や意味に気付き、「こんなふうにしたい」と試したり予想したり、「もっとこうしてみよう」とさらに遊びを発展させたり、その経験を違う遊びに応用してみたりすることを経験しています。このようにしっかりと遊ぶ(=遊び込む)経験を積み重ねていくことで、子どもたちは、人と関わる力や思考力、感性や表現する力などが育ちます。この力は、小学校ではもちろん、小学校以降も自ら学ぶことや、人と関わりながら生きていく「土台」となります。
この「土台」がしっかりとしていくために、成田西子供園では、「遊び」をとても大切にしています。今年度は、杉並区の教育課題研究の指定園として「やってみたい・こんなふうにしたい・もっとこうしてみようと心を動かして遊ぶ〜遊び込む幼児を育てるための環境の工夫〜」というテーマのもと、子どもたちが遊び込み、豊かな経験を確実に積み重ねられるように、よりよい環境の工夫や保育者の援助のあり方を考え、質の高い保育を行えるように研究を深めていっています。日々保育実践と検討を繰り返し、充実した保育を通して、子どもたちがしっかりと遊び、育つようにします。

4月「げんきな子 かんがえる子 自分も人も好きな子」 園長 齋藤由美 

新入園児の保護者の皆様、お子様のご入園おめでとうございます。進級児の保護者の皆様、お子様のご進級おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
令和6年度は、らっこ組21名、ぺんぎん組28名、いるか組32名、全園児81名でのスタートです。
新しく先生方もお迎えしました。ぺんぎん組担任には、育児休業から戻ってきた松田(まつだ)陽(あき)先生、保育補佐跡部(あとべ)陽子(ようこ)先生、保育補助新美(にいみ)亜希子(あきこ)先生、保育補助大内(おおうち)千江(ちえ)先生、看護師輕部(かるべ)久美(くみ)先生、朝パート西野(にしの)真澄(ますみ)先生です。新たなメンバーと共に、毎日がわくわくドキドキ、笑顔いっぱい楽しく豊かな保育が展開される成田西子供園にしていきます。 

成田西子供園では、心身ともに健康で、自ら考え主体的に遊びや生活に通り組むことができる幼児の育成を目指して、次のように教育目標を設定しています。
「げんきな子 ◎かんがえる子 自分も人も好きな子」(◎今年度の重点課題)
げんきな子・・・一人一人が、体を動かして遊ぶことが楽しい!体を動かすことが気持ちいい!と、伸び伸びと自分を発揮できる子。自ら体を動かし進んで運動しようとする子。自分の体を大切にできる子。
◎かんがえる子・・・不思議だな!やってみたい!こんなふうにしたい!おもしろい!もっとこうしてみよう!と自分のやりたいことに取り組み、じっくり遊び込める子。自分で考えることを楽しいと感じる子。
自分も人も好きな子・・・友達と一緒に過ごすのが楽しい!力を合わせるのが楽しい!と、自分らしさを出しながら友達と互いを受け入れ合い、自分も人も大切にできる子。 

一人一人が自分のやりたことを見つけて、じっくり遊ぶ中で、周りの様々な事象に興味関心をもち、やりたいことを実現するために、考えたり工夫したりしながらいろいろなものや人と関わり育つようにします。また、子供園では、楽しい経験だけでなく、失敗や葛藤する経験などを重ねながら、自分で考える楽しさや豊かな感性、表現する喜びなどを育てていきます。

今年度成田西子供園は、令和5・6年度杉並区教育委員会教育課題研究指定園として、11月15日(金)に研究発表を行います。研究主題を「やってみたい こんなふうにしたい もっとこうしてみようと心を動かして遊び込む幼児を育成するための環境・援助の工夫」として昨年度から研究に取り組んでいます。今後、研究の内容についてもお伝えしていきます。

今年度も子どもたち一人ひとりが、身近な環境、人、様々な出来事に関心をもち、自分から関わり、考え夢中になって遊び込む中で、心も体もたくさん動かしてすくすくと育ってほしいと願っています。そして、お子様の健やかな成長を願い、保護者の皆様と共に子どもたちの育ちを支えて見守っていきたいと考えています。
職員一同力を合わせて教育の充実に努めてまいります。保護者の皆様、地域の皆様、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。