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2022.02.26暖かくなってきましたが...

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東京は朝から良い天気ですが、今年はいつになく雪が多く、今日も上越線、六日町~越後湯沢で運転見合わせ。飯山線で一部運休。只見線での運転見合わせなど、関東地方でも雪による被害が出ています。北海道でも列車運休や航空機欠航などの様子や、大学入試への影響などが報道されていました。東京でも、すでに2回積雪がありましたし、先日出かけた菅平もかつてない積雪でした。こんなに雪が多いとこのお話を思い出します。昭和63年に偕成社から刊行された『手ぶくろを買いに』です。この本は長年読み続けられてきた新美南吉のお話です。繊細で温かな黒井健の絵は、美しい言葉で語られた情景と狐の親子の心情を際立たせています。

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森にどっさりと雪が降った日、牡丹色に冷えた子狐の手を見た母さん狐は、坊やの手に合う手ぶくろを買ってやろうと思います。親子で街の灯が見える所までやってきますが、人間の怖さを知っている母さん狐の足はすくみます。早く行こうと言う子狐に、仕方なく、母さん狐は子狐の片方の手を人間の手に変え、その手に白銅貨を握らせます。そして、帽子の看板の家の戸の隙間にこっちの手を入れ、この手にちょうどいい手ぶくろをちょうだいと言うことと、人間は怖いものなのだと教えて子狐を送り出します。お店の光にめんくらった子狐は間違った手を出してしまいます。でも、子狐の手の白銅貨が木の葉じゃないとわかった帽子屋さんは、子供用の手ぶくろを子狐にもたせます。帰り道、ある窓の下で人間のお母さんが歌う子守唄を聞いた子狐は、急に母さん狐が恋しくなります。坊やの帰りを震えながら待っていた母さん狐は、帰ってきた子狐を抱きしめます。「母ちゃん、人間ってちっとも恐かないや」という坊やの言葉に、「ほんとうに人間はいいものかしら。」と母さん狐はつぶやくのでした。

子供があふれる好奇心で自らの世界を広げていく怖いもの知らずの冒険心は、冷たい手を包み温めてくれる手ぶくろのようなお母さんがいるからこそ、わき起こり、子供は行って帰ることができます。そして、冒険の途中には、子狐に本当のお金を持たせた母さん狐の思いに気づき、受け入れてくれる帽子屋さんの存在があります。世の中、悪い人ばかりじゃない。悪いことばかりじゃないという希望をこのお話に感じます。

 

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