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2022.01.141959,01,14 タロジロ発見

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日本の南極観測史上最も有名な実話が「タロとジロの奇跡」です。極寒の南極で鎖につながれたまま置き去りにされた日本隊の樺太犬、タロとジロが1年後に発見、保護され「南極物語」として映画化もされました。現地で2匹と再会を果たした第1次、第3次越冬隊員が、当時の様子と「第3の生存犬リキ」への思いを語ってくれました。

苦楽をともにした15匹、やむなく基地に

 1958年2月、日本の南極観測隊は昭和基地で第1次越冬隊と第2次越冬隊の交代作業を進めていた。ところが、あまりの悪天候のため第2次越冬は急きょ中止となり、関係者全員が南極から脱出することになりました。隊員たちと苦楽を共にし、重いそりを引いて貢献してきた15匹の樺太犬は、救出する余裕がなく、やむなく基地に残されることになりました。最後の隊員が離れるとき、不穏な空気を察したのか、犬たちは一斉に「ウオ~ン」とほえたといいます。「『もう犬たちは終わりだ』と絶望的になりました」。第1次隊でオーロラ観測を担う一方、犬係として訓練を担当した隊員は振り返ります。その後、第3次隊員として再び南極に向かいます。「せめて手厚く葬ってあげたい。それだけを願って参加したのです」

タロ、ジロと奇跡の再会「雪上を転げ回った」

 59年1月、基地に到着した隊員たちは驚きの声を上げた。鎖から離れ、極寒の地で2匹が生き延びていたのです。どの犬なのかは分からず、残した犬の名を順に呼ぶが反応がない。「私のことを忘れてしまったのか」。1年前はまだ幼かったタロとジロの名が残った。「タロ」。そう声を掛けると1匹の尻尾がぴくりと動いた。「タロだったのか」。もう1匹にも呼び掛けた。「おまえはジロか」。すると右の前足を前方に上げた。ジロの癖だった。甘える2匹と南極の雪上を転げ回った。15匹のうち、ほかの7匹は鎖につながれたまま氷雪に埋もれて死んでいました。あと6匹の姿はありませんでした。「鎖につながれて息絶えたり、行方不明になったりした犬たちには本当に申し訳なかった」。今も自責の念がこみ上げるといいます。

親代わりの「リキ」2匹を守り力尽きた?

 タロとジロの生還から9年後の68年、昭和基地のそばの解けた雪の中から、1匹の樺太犬の死骸が見つかった。と連絡がありました。タロ、ジロ以外にも鎖から離れ、一時は基地周辺で生きていた「第3の犬」が存在したことになります。灰色で短毛。特徴から、行方不明6匹のうち「リキ」と思われた。第1次越冬中、幼かったタロとジロに自分の餌を与え、実の親のように片時も離れず2匹の面倒を見ていた姿が脳裏に焼き付いています。「リキは鎖から逃れた他の5匹の犬と同様、どこにでも行けた。しかし自力では食料を得られそうにない幼いタロとジロを見捨てて逃げることができず、一緒に基地に残ったのではないか」「若いタロ、ジロと違い7歳の最年長だったリキは徐々に体力を失い、力尽きてしまったのだろう」リキの確認からは今年で50年。「タロとジロのことは多くの人が知っているが、リキのことを知る人は少ない。リキも同じように極寒の昭和基地近くで必死に頑張って生きようとしたことを、多くの人に知ってほしい」と語っています。(2018/10/13付 西日本新聞夕刊より)

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