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令和7年度 園だより
7月 『子どもの“わくわく”に目を向けて』 主任教諭 松田陽
『とうきょう すくわくプログラム』の取り組みが今年度より始まりました。この取り組みでは、各園の実態に合合わせた年間テーマを設定し、活動を進めていきます。子どもの“わくわく”と心動かす瞬間を丁寧にとらえ、保育者が意図的に保育環境をデザインしていく中で、幼児が探究的に遊ぶ楽しさを経験できるようにします。
本園ではテーマを『自然』に設定し、様々な活動を計画しています。4月末には、取り組みの最初のきっかけとして、“自然博士のなおきさん”をお迎えし、いるか組の子どもたちと善福寺川緑地公園に自然探検へ行きました。身近な公園でも、“自然博士のなおきさん”がいることで、子どもたちはいつも以上に草花に関心を寄せ、次々と質問をしていました。散歩から帰った後も、いるか組の子どもたちの気持ちは雑草やそこに集まってくる虫たち、園庭で発見したキノコなどに向かい、それぞれの興味のもとに関わりが続いていっていました。
楽しいことは、学級の枠を超えて、他学年の幼児にもどんどん広まっていきます。「何してるの?」「ここにダンゴムシがいっぱい住んでるんだよ」といった幼児同士の会話から、ぺんぎん組へ、その数週間後にはらっこ組へと伝わっていきました。でも、関わる子どもの年齢やこれまで経験してきたこと、好きな遊びが違うと、全く違った方向へと活動が展開していきます。
いるか組では、あるお子さんが連れてきたアオムシに学級のみんなが思いを寄せて、毎日愛おしそうに変化を眺め、成長を喜び、旅立ちを嬉しそうに見守っていました。その間に、ペーパー芯やモールを使った虫作りや、「オリジナル虫図鑑」作りが一部の子の間でブームになり、たくさんの虫や手作り図鑑ができあがり、虫博物館のようになっていきました。本物についてより詳しく知りたい、本物のように作りたい、といった知的探究心は年長組らしい姿です。
ぺんぎん組では、ダンゴムシを見る楽しさから、自分たちでダンゴムシの公園を作り、そこでダンゴムシが動く様子を見ることが楽しくなっていきました。大小様々な空き箱やカップを見付けてきては、つなげたり組み合わせたりして、ダンゴムシを遊ばせようとします。そうしている間に、ダンゴムシにさらに愛着が湧き、自分たちと同じように感情移入するようになっていくと、「自動販売機もあると喜ぶだろう」「素敵な飾り付けもしたらいい」など、たくさんの“してあげたいこと”が生まれてくるようになりました。ハサミやセロハンテープがある程度自分の思い通りに使えるようになり、作ることが楽しくなってきていることも、遊びの楽しさにつながっていたのでしょう。
らっこ組の子どもたちは、対象そのものと関わることが楽しくて仕方がありません。それを使って遊ぶ、ということではなく、毎日毎日、ダンゴムシたちの集まる場所に行っては、それぞれのバケツやカップにたくさん集め、近くの幼児同士で見せ合い、そっと触り、そしてまた草むらに逃しながら、繰り返し関わることを楽しんでいます。大好きなダンゴムシと毎日関わる中で、やさしく触るという力加減を覚えたり、虫たちがどんな場所が好きなのかを感覚的に知っていったりしています。
春の虫との関わりだけでもこれだけ多様な楽しさ(探究する姿)を見せてくれる子どもたちです。1年間でいったいどんな“わくわく“が待っているのか、保育者側が置いていかれないように、それぞれの幼児の心もちにしっかりと目を向けて、大切に捉え、それぞれの興味に寄り添った援助をしていきたいと思います。
様々な活動の様子は日々の貼り出し日誌や『すくわくプログラム活動報告』でもお伝えしていきます。子どもたちの今楽しんでいることを保護者の方とも共有しながら、遊びを通して子どもたちの成長を支えていきたいと思います。この夏、ご家庭でも“わくわく”と心を動かしている姿がありましたら、ぜひ園にもお知らせくださいね!
6月 園の遊びの文化を引き継いで 園長 齋藤 由美
新年度がスタートし2カ月経ちました。子どもたちは、新しい環境や先生たちとの生活にも慣れ、やりたいことを見つけて生き生きと遊んでいます。泣いたり笑ったりと毎日いろいろな表情を見せてくれています。
保護者会でもお話しましたが、自園は単学級ということもあり縦割りの関わりを大切にしています。保護者ボランティアの方々に土づくりをしていただいた後は、3学年の子どもたちが同じ場で幼虫や取り除いた球根、葉を使い、学年様々に自然と触れ合う姿が見られました。作った大きな畑には、全園児で野菜の苗を植え生長を楽しみに見守っています。
さて、先日年長組が井の頭自然文化園に遠足に行きました。遠足から帰る頃には、「らっこ組さんとぺんぎん組さんに何か楽しいことをしてあげたい。」「遊園地をつくろうよ。」といった声が上がっていました。そして、翌日から友達とジェットコースター、カフェ、むしむしはくぶつかん、アイドルショーなど、少しずつ楽しそうなお店をつくり始めました。自分たちで互いの遊び場を行き来して遊びながら刺激を受け合い、友達と力を合わせてつくっていく姿がありました。まだ年長になったばかりということもあり、自分たちだけで友達とめあてに向かって進めたり、やりたいことを実現するための方法を考えたりするには、保育者の援助が必要です。しかし、子どもたちの心の中には、昨年、一昨年と年長組の遊園地で自分たちがお客さんとして遊んで楽しかったという思いが残っています。こうした経験が自分たちも「遊園地を作ってお客さんを楽しませたい!」という原動力につながっているようでした。
らっこ組やぺんぎん組は心をワクワクさせながら順番を待ち、いるか組のお兄さんお姉さんに案内してもらいながら、乗ったり見たり食べたりと、遊園地での遊びを楽しみました。何度も遊園地に通う姿がありました。ホールの遊園地を片付けた後も、らっこ組の子どもたちはもっと遊びたいと、いるか組へ「今日も遊園地やりますか?」と聞きに行く姿がありました。
年長さんに楽しませてもらった経験は、年中・年少組の子どもたちにとって大きな刺激となり、今後自分たちも「あんなふうにしてみたい。」「やってみたい。」という思いにつながっていくことでしょう。また、お客さんの喜ぶ顔を見て、年長組も「すごいことができた。」「やってよかった。」「次はこんなことをしてみたい!」という意欲につながっていくことでしょう。遊びを通して気持ちがつながり、憧れが意欲へと変わっていくそんな素敵な場面がたくさん見られています。
毎年この時期になると年長組の遠足後に遊園地ごっこが始まり、カラフルなパラソルがホールに立てられ、子どもたちが楽しそうに遊ぶ光景があります。遊びの中にあるワクワクや楽しさが、言葉を超えて伝わっていくのがすごいことだなと感じます。園の中で育まれてきた遊びの文化が、毎年少しずつ形を変えながらもしっかりと引き継がれています。これからの子どもたちの遊びがどのように展開されていくのか楽しみです。
今月も、子どもたち一人ひとりの「やってみたい。」「こんなふうにしたい。」とワクワクと心を動かす気持ちに寄り添い、夢中になって遊べるようにしていきます。四季折々の中でできる豊かな体験も逃さないように環境を工夫してまいります。
これから梅雨の季節に入り気温や湿度の変化が大きい時期となります。こまめな休息や水分補給をしながら子どもたちが毎日元気に過ごせるよう見守っていきます。